事前確定届出給与とは何か。制度の整理と実務上の注意点

保険契約者である企業の経営者や、時には税理士の先生からも、
「事前確定届出給与って実際どうなんですか?」
と聞かれることがあります。

制度としては古くから存在していますが、実務では意外と知られていない、あるいは慎重に扱われているテーマの一つです。


役員賞与は原則、経費にならない

まず前提として、役員に対する報酬の扱いを整理しておきます。

社員に支払う賞与は損金(経費)として認められますが、
役員に対する賞与は原則として損金不算入となります。

これは、利益調整を防ぐためのルールです。
「利益が出たから賞与で調整する」といったことが認められてしまうと、課税の公平性が保てなくなるためです。


例外として認められる「事前確定届出給与」

その中で、唯一例外的に認められているのが事前確定届出給与です。

あらかじめ
・支給日
・支給額
を税務署に届け出ておくことで、その内容どおりに支払われた場合に限り、損金として認められます。

なお、この制度はあくまで法人税の取り扱いであり、個人の所得税の計算に影響するものではありません。


実務上の最大の注意点

この制度で最も重要なのは、
👉 「届出どおりに支払うこと」です。

・1日でも支給日がずれる
・1円でも金額が違う

この場合、全額が損金不算入となる可能性があります。
柔軟性はほぼなく、極めて厳格な運用が求められる制度と言えます。


社会保険との関係

この制度が実務で注目される理由の一つに、社会保険料との関係があります。

社会保険料は、標準報酬月額や賞与額に応じて決定されますが、それぞれに上限が設定されています。

例えば、毎月の役員報酬が高額な場合、すでに上限等級に達しているケースも少なくありません。

このとき、報酬の一部を事前確定届出給与として設計することで、結果的に社会保険料の負担構造に影響が出る場合があります。

ただしこれは、あくまで制度の結果としてそうなるものであり、それ自体を目的とした設計には慎重さが求められます。


経済合理性という視点

実務上、もう一つ重要なのが「経済的合理性」です。

例えば
・毎月の報酬を極端に低く設定する
・多額の報酬を賞与に集中させる

といった設計は、
形式的には制度に沿っていても、合理性の観点から疑義が生じる可能性があります。


見落とされがちな影響

また、社会保険料の観点だけでなく、

・将来受け取る年金額
・傷病手当金などの給付水準

といった点にも影響が出る可能性があります。

特に役員以外の従業員に適用する場合、制度理解が不十分なまま導入すると、後々のトラブルにつながるリスクもあります。


まとめ

事前確定届出給与は、制度として認められている選択肢の一つです。

ただし、

・厳格な運用が求められること
・経済合理性が問われること
・社会保険や将来給付への影響があること

これらを踏まえると、単なるテクニックとして扱うべきものではありません。

あくまで、
企業の実態や経営方針に応じた設計の中で検討されるべき制度です。

導入にあたっては、税理士などの専門家と十分に協議し、慎重に判断していくことが重要だと考えます。
(FD00281)