5月9日の日経新聞朝刊で、企業年金に関する興味深い記事が掲載されていました。企業年金の主流が「確定給付」から「確定拠出」へ移りつつある、という内容です。
記事によると、企業型確定拠出年金(企業型DC)の加入者数は2024年度末で862万人。勤労人口全体で見れば、おおよそ「8人に1人」が加入している計算になります。導入事業所数も5万8,326件まで増加しているとのこと。特に近年は中小企業での導入が増えているようです。
一方で、まだまだ中小企業では「制度自体を導入していない」企業も多いのが現実です。
背景には色々あります。
制度が難しい。説明を受けてもよく分からない。手続きが大変そう。そもそも社長自身がNISAやiDeCo、企業型DCの違いを整理できていない。そうしたケースも少なくありません。
ただ、時代は確実に変わってきています。
かつての日本は、預金しておけば自然と増える時代でした。ところが今はインフレの時代。現預金だけを持っていると、実質的には資産価値が目減りしていく局面に入っています。
「老後2,000万円問題」などという言葉もありましたが、実際にはもっと本質的な問題があります。
それは、“自分でお金を守り育てる力”が求められる時代になった、ということです。
その中で企業型DCやiDeCo、新NISAなどの制度は非常に重要な役割を持っています。
ちなみに、この辺りは言葉が非常に分かりにくい。
iDeCo、企業型DC、401k…。
似たような単語が並び、「結局何が違うの?」という方も少なくありません。
簡単に言えば、
・iDeCo → 個人が自分で加入し、自分で積み立てを行う制度
・企業型DC → それを企業主体で行う制度
というイメージです。
さらに企業型DCの中でも、
「会社がお金を出す」のではなく、社員が自分の給与の一部を自ら拠出して積み立てる仕組みが、いわゆる“選択制確定拠出年金”。
一般的には「401k(ヨンマルイチケー)」と呼ばれることも多い制度です。
私が代表を務める株式会社FPSでは、この選択制401kについて、中小企業向けの導入支援も行っています。
ここで誤解されやすいのが、「選択制401k=会社が退職金を積み立ててくれる制度」という認識です。
実際には少し違います。
選択制401kは、社員が自分の給与の一部を自ら拠出し、それを長期運用していく制度です。
つまり“会社からもらう退職金”というより、“自分で将来資産を作る仕組み”に近い。
この考え方は非常に大事だと思っています。
私自身、中小企業の経営者の方から(社員のために・採用のために)、
「退職金制度を作った方がいいですか?」
と相談を受けることがあります。
もちろん会社ごとに考え方はありますが、私個人としては、安易な退職金規定の作成には慎重な立場です。なぜか。
退職金規定を作ると、将来的な退職給付債務として会社財務を圧迫する可能性があるからです。特に中小企業にとっては、固定的な将来負担が経営リスクになることもあります。
もちろん、中小企業向けには
・中退共(中小企業退職金共済)
・建退共(建設業退職金共済)
などの制度もあります。これらも非常に有効な制度ですが、業種や会社規模、採用戦略によって向き不向きがあります。万能ではなく、しっかり検証して導入すべきものだと思います。
その点、選択制401kは、社員自身が主体的に積み立てを行う仕組みであり、会社としても比較的導入しやすい制度です。
副次的には社会保険料の軽減効果が出る場合もありますが、私はそこをメインには考えていません。
やはり本質は、
「社員の経済的自立」
「金融リテラシー向上」
にあると思っています。
そしてもう一つ。
この制度があること自体が、今後は採用や定着にも大きな影響を与える時代になっていくと思います。
実際、FPSでも9年前から選択制401kを導入しています。
選択制ですので強制ではありませんが、現在はほぼ全社員が拠出しています。そして現状としては、非常に高い運用利回りになっている社員も多くいます。
もちろん、相場環境に恵まれている面はあります。今後は下落局面もあるでしょう。それでも「長期・積立・分散」で続けることの重要性を、社員自身が体感できているのは非常に大きいと思っています。
一方で、制度を入れれば終わりではありません。
むしろ一番大事なのは、その後の継続教育です。
実は大企業でも、制度導入はかなり進んでいます。法定教育も行われています。それでも「よく分からない」という方は本当に多い。
先日も、大手企業に勤める友人から、
「ちょっと見てくれへん?」
と、自分の401kの資産配分を見せられました。
その中には日本債券ファンドが一定割合入っていました。
もちろん、日本債券ファンド自体が悪いわけでは決してありません。
ただ、金利上昇をうかがう今の局面では、少し整理して考えた方がいいタイミングかもしれない。そんな話をしただけで、非常に感謝されました。
結局、多くの方は「誰に聞けばいいのか分からない」のです。
NISA、iDeCo、401k…。
言葉だけが独り歩きし、情報が溢れ、かえって混乱している方も多い。
だからこそ、地域に根付いたFP事務所の役割は大きいと思っています。
FPSでも中小企業向けの選択制401k導入支援を行っており、私個人でもこれまで10社程度の導入に携わってきました。まだ実績としては決して多くありませんが、単なる制度導入ではなく、その後の教育や伴走こそ大切だと感じています。
またFPSでは現在、FP3級講座も開催しています。
当初想定していた以上に反応が良く、参加者も少しずつ増えてきました。
「お金のことをちゃんと学びたい」
そんな空気感が、社会全体で少しずつ広がってきているように感じます。
保険、相続、資産形成。
どれも別々ではなく、本来は人生設計の中でつながっているもの。
制度だけを売るのではなく、情報発信や相談の受け皿として、これからも地域の皆さまのお役に立てればと思っています。
(FD00306)