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2024.03.30
ブログ
遺留分侵害額請求権の時効完成を阻止する方法
(はじめに、今回の内容はかなりマニアックになっていますので、ご覧いただいた方、睡魔にご注意ください。また難しめの四文字熟語(四文字以上の場合もあります)が出てき始めると、私は頭の中が混乱状態🥴に陥ることがあることを予めご了承ください。)
遺留分侵害額請求の時効完成を阻止🖐🚫する方法(いわゆる逃げ得を許さない方法と勝手に思っています)については、2020年4月1日改正民法(債権法)施行の前後で異なるルールが設けられました。
2020年3月31日までに開始した相続については、改正前のルールが適用されますので、以下それぞれのルールについて解説します。
(1) 【民法改正前】時効の停止・中断
改正前の民法では、時効期間の進行を一時的に停止させる「時効の停止」と、時効期間を一旦リセットしてもう一度ゼロからカウントし直す「時効の中断」の2つの方法が認められていました。
そのため、2020年3月31日以前に発生した相続については、改正前民法のルールに従って時効の完成を阻止する必要があります。つまり遺留分侵害額請求を行う場合は、まずは相手方に内容証明郵便を送付して、一時的に時効を停止させ、その後正式に訴訟を提起(裁判上の請求)することで時効を中断するという流れが、逃げ得を許さない一般的な方法でありました。
(2) 【民法改正後】時効の完成猶予・更新
2020年4月1日以降に発生した相続については、改正後の現行民法の時効に関するルールが適用されております。
現行民法では、時効期間の進行を一時的に停止させる「時効の完成猶予」、時効期間を一旦リセットしてゼロからカウントし直す「時効の更新」と名称が改められ、それぞれの事由も精緻化されています😅
●時効の完成猶予とは
時効の完成が一定期間「先延ばし」にされることです。消滅時効期間が過ぎる前に「完成猶予事由」が生じると、消滅時効は完成されず権利も消滅しません。
例えば、時効の完成が迫っていて裁判が間に合いそうにない場合でも、催告を行えば時効の完成が阻止され期間が引き延ばされるという訳であります。
ただし「時効の完成猶予」は、一定の事由が終了するまで一時的に時効が完成しないことを意味するため、消滅時効期間がリセットされるわけではありません。
●時効の更新とは
進行していた消滅時効期間が「リセット」され、新しくゼロからスタートすることです。
例えば、数年間返済されていなかった借金の場合で、5年経過後に債務者(お金を借りた側)が「時効の援用(援用とは意思表示のことでしたね)」をすると、債権者(お金を貸した側)は請求する権利を失ってしまいます。
そこで、そんなことを回避したい債権者が、4年経過後に裁判を起こして、裁判所から確定判決をもらえば消滅時効期間は4年からゼロにリセットされ、再度スタートするということであります。
「時効の完成猶予」は一定の事由が終了するまで時効が完成しないことであるのに対し、「時効の更新」は消滅時効期間がリセットされますので、時効を回避するための措置としては、より強力であることが違いです。
現行の民法では、裁判上の請求として訴訟を起こした時点では、時効は更新(中断)されず、完成猶予(一時停止)にとどまるということになっております。
とんでもなくややこしくなってきましたです。ハイ。
しかし、最終的に訴訟で権利が確定しますと時効が更新(中断リセット)されますので、旧民法と実質的に大きな違いはなく、遺留分侵害額請求のケースで時効の完成を阻止する(逃げ得を許さない)方法としては、民法改正前後に関係なく、内容証明郵便の送付を経て訴訟を提起するという基本的な流れをやっていくことになります。
【参考として】
民法第161条に、「天災」等による時効の完成猶予について記載されておりました。分かり易かったので参考にどうぞ☕
消滅時効期間が満了するとき、天災やその他避けることができない事変のため「時効の更新」ができないときは、障害が消滅した日から「3か月」経過するまで時効は完成しないとされています。例えば「大洪水」や「震災」や「戦争・テロ」などで、裁判所や郵便局が休業状態で「裁判上の請求等」や「強制執行」の手続ができない場合などを想定しているようです。
改正前の民法では天災等によって法的措置をとることができないことで、時効の完成が認められてしまうことは可哀そうだとして、そのような状態がなくなってから2週間経過までの間は時効が完成しないという取扱いになっていました。流石にそれでは短すぎてアカンやろとなって3か月と改正されたのだそうです。
なお色々な障害が消滅して3か月が経過してしまいますと時効は進行します。
遺留分侵害額請求権行使後の金銭債権の消滅時効
この辺からは、さらに超絶マニアック過ぎるので軽く流し読みでお願いします。
遺留分侵害額請求を行った場合、遺留分侵害額請求権は、それ以降一般的な金銭債権へと移行します。
このとき、債権一般に関する消滅時効のルールが適用されることになりますので注意が必要です。
(1) 遺留分減殺請求権との違い
2019年7月1日に改正民法(相続法)が施行されるより前は、遺留分侵害額請求は「遺留分減殺請求」という名称で呼ばれていました。
遺留分侵害額請求権とは異なり、遺留分減殺請求権には、請求をした時点で、減殺の対象となる贈与・遺贈の目的物の所有権を当然に侵害者から権利者へ移転させる、いわゆる「物権的効果」が与えられていました。そのため、遺留分減殺請求権には、債権一般に関する消滅時効の適用がありませんでした。
これに対して、遺留分侵害額請求権は単純な金銭債権となるため、以下で解説する債権一般に関する消滅時効のルールが適用されるという違いがあります。
(2) 消滅時効期間は5年 or 10年|民法改正前後で異なる
債権一般に関する消滅時効のルールは、2020年4月1日施行の改正民法(債権法)によって変更されております。
したがって、遺留分侵害額請求を行ったタイミングが2020年3月31日以前か、同年4月1日以降かによって、以下のとおり時効期間が異なります。
遺留分侵害額請求を行った時期 | 時効期間 |
---|---|
2020年3月31日以前 | 権利を行使することができる時から10年 |
2020年4月1日以降 | 以下のいずれか早い方 ・権利を行使することができることを知った時から5年 ・権利を行使することができる時から10年 |
民法改正後に請求を行った場合は、民法改正前に請求を行ったケースと比較して、時効期間が半分になっている点に注意ですよ。
遺留分侵害額請求の時効についてのおさらい(FAQ)
●遺留分の請求期限はいつまででしたか?
遺留分の請求期限は以下の2つがあります。
- 消滅時効
相続の開始および遺留分を侵害する贈与または遺贈があったことを知った時から1年 - 除斥期間
相続開始の時から10年
●遺言無効の訴訟をする際に遺留分侵害額請求もできる?
遺言書に、「全ての財産を特定の相続人に相続させる」などと記載されている場合、遺言書そのものの有効性が争いになることがあります。遺言無効確認訴訟を起こす際に、遺言が遺留分を侵害しているのであれば、侵害額請求を併せて行うことが一般的なんだそうです。遺言が無効であるとすれば、そもそも遺留分は侵害されておらず、遺言無効確認訴訟と遺留分侵害額請求とを同時に行うことが、えっ? 何で? と感じられる方が多いと思います。しかし、遺言無効確認訴訟には、遺留分について時効の完成を猶予する効果がないため、遺言無効確認訴訟のみを提起して敗訴し、遺留分の時効が完成すると、何も得られなくなってしまうのだそうです。
遺言無効訴訟を提起する際に、遺留分が侵害されているのであれば、同時に内容証明郵便の送付✉が必要となります。
遺留分侵害額請求は誰に依頼すべきか?
遺留分の侵害を知った相続人は、ご自身で内容証明郵便の送付まではできるかもしれません。
しかしその後、遺留分を侵害した相手方との交渉や調停・裁判👨⚖️が待ち構えているのであります。
遺留分を正確に算出するのは、請求する側(侵害された側)の責任なので、相続人にとっては、非常に困難で大変な作業となること間違いなしです。
ですので、遺留分侵害額請求を専門の先生にお願いすればどうなるかというと、
● 時効完成前に対応が可能
● 正確な遺留分の計算を行ってくれる
● 交渉を任せることができるので時間や手間・精神的負担を抑えることもできる
● 調停や訴訟になっても対応可能
となるのであります😄
頭が混乱してまいりました。ちょっと深堀「遺留分」② 時効についてはこれにて終了です🙇♂️
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では次回ブログ、ちょっと深堀「遺留分」③ 生命保険 についてをご期待ください‼
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