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2024.05.20
ブログ
「相続させる」と「遺贈する」
【難易度】★★★☆☆
自分が亡くなった後に、ご自身が所有する不動産や預貯金等の財産を、特定の人に取得させたいと思われたことはございませんか?
そんな時、「遺言書」を作成しておきたいと考えますよね。
今回は、遺言書を作成する時に、「相続させる」という文言と「遺贈する」という文言の、どっちをどうやって使い分けるのが良いのかについて解説していきます。
え!! 違うの?? どっちでもえぇや~ん!? そう思われた貴方、必見です😄
実は、財産を取得させたい特定の人が、相続人か、相続人以外の者かで、遺言書に記載する文言をこれから解説するように使い分けるのが通例になっているのであります。
『相続させる遺言』とは?
特定の相続人に特定の財産を取得させたいときは「(不動産、預貯金等を)○○に相続させる」と遺言書に記載します。
いわゆる『相続させる遺言』と呼ばれたりしているものであります。
もともとは、登記の原因が「相続」か「遺贈」かによって登録免許税の税率が異なっていた時代に、登録免許税の負担を軽減するために公証人の工夫により編み出された記載文言だそうで、公証の現場において定着したのだそうであります😲
👉ちなみになる話①
平成15年法改正以前の登録免許税の税率は、登記原因が相続の場合は1,000分の6、登記原因が遺贈の場合は、1,000分の25とそれぞれ異なっていました。
現在は、不動産を取得する者が相続人の場合であれば登記原因が相続でも遺贈でも1,000分の4と、同じ税率になっています。(相続人以外の者への遺贈は、1,000分の20です。念のため)
『遺贈する遺言』とは?
相続人以外の特定の人(長男の配偶者や孫、内縁の妻等)に特定の財産を取得させたいときは「(不動産、預貯金等を)○○に遺贈する」と遺言書に記載します。
いわゆる『遺贈する遺言』であります。
遺贈は、相続人に対しても行うことができますが、遺贈でなければならない特別の理由がない場合には、相続人に対しては相続させる旨の遺言を作成するのが一般的です。遺言を作成する時に特に注意してほしいのが、相続人でない者に対して特定の財産を取得させたいときは、「遺贈」するという文言を使うことであります。
公正証書遺言を作成するときは、公証人が遺言作成に関わっておりますので、法律上の問題が生じるような文言を記載した遺言書が作成されることはまずないとのことです(それでもあるらしいデス)が、自筆証書遺言では、相続人以外の者に「相続させる」、「あげる」、「譲渡する」、「遺す」等、後々トラブルに発展するような文言が記載された遺言書が出るわ!出るわ!! なんだそうです😄
👉ちなみになる話②
相続人でない者に対して特定の財産を相続させる旨の遺言は、文面上の文言のルールに則って解釈すれば無効になるといえます。
とは言うものの、法律的には不正確な文言を記載した遺言が直ちに無効になるわけではないのであります。遺言はなるべく有効になるように解釈すべきであるという、「遺言有効解釈の原則」がございまして、最高裁判所は「遺言の解釈にあたっては、遺言書の文言を形式的に判断するだけではなく、遺言者の真意を探求すべきである」(最判昭58・3・18)としています。この原則によれば、遺言書に相続人以外の者に相続させると記載されていたとしても、遺言者の真意はその者に自己の財産を与えたいということですので、「相続させるというのは遺贈することだ」と解釈する余地が十分にあることになります。ところが・・・
👉ここからが重要ポイント
取得させたい財産が不動産の場合は少し難儀なことになるのであります。
相続にしても遺贈にしても、不動産を取得した際には、法務局へ登記の申請をして名義を変更することになるのですが、登記ができるかできないかは提出された申請書と添付書面のみで判断されているのであります。
これを『登記官の形式的審査権』と呼んだり『形式的審査主義』と呼んだりしています。相続人以外の者が相続させる旨の遺言書を提出して相続登記を申請しても、相続人でない者名義の相続登記はできません。なぜなら、相続登記には、申請人が相続人であることを明らかにするために、被相続人の戸籍謄本等の提出が求められていますので、相続人でない者が相続登記を申請しても相続人ではないことが法務局にバレてしまうからであります。
登記官から「は? おたく相続人とちゃいますやんか!!」となるのであります😂
では、遺言書に記載されている相続させるというのは、遺贈するという意味だとして遺贈による所有権移転登記を申請した場合はどうなるか?形式的な審査権限しか有していない登記官としては、遺言書に相続させると記載されている以上、相続として処理するのが原則となります。申請書の内容(登記原因を「遺贈」と記載している)と添付書類の内容(遺言書には相続と書かれている)が一致しないときは、その申請は却下されることになってしまいます😄
相続人以外の者に対する相続させる旨の遺言を、「遺贈」と解釈して、登記原因を遺贈とする所有権移転登記を認めた例はあるそうですが、あくまでも個別案件についての例外的取扱いであると考える方が良さそうです。
👉ちなみになる話③
登記官は、登記を受付けるにあたって審査します。その審査について、表示の登記と権利の登記では違いがあります。表示登記については、申請義務もありますので、キチンと申請してもらわないといけませんので、登記官は「実質的審査権」があります。実質的審査権というのは、その登記が本当かどうかを審査できるということであります。表示登記の場合では、実地調査もできるのであります。
自分の死後に、子の配偶者、内縁の夫、内縁の妻、兄弟姉妹(第一、第二相続人がいない場合を除く)等に、自己の財産を渡したいと考えておられる方もいらっしゃるでしょう。
これらの方は、いずれも相続人ではありません。
これらの者に対して、自分の死後に財産を与えたいときは、「遺贈」という文言を使用しなければなりません。間違って、相続させるという文言を使ってしまうと、遺言の有効性について相続人とトラブルになることは簡単に予想できますし、相続人全員が財産の取得を認めている場合でも不動産登記等の名義変更をスムーズに行うことは難しくなります。
遺言書を作成するときに注意すべき点は多々あるのですが、先ずは、相続人に財産を与えるときは『相続させる』、相続人以外の者に財産を与えるときは『遺贈する』と記載することだけは覚えておいて損はないですよ👍
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